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海外で見直される麻 

海外では、1990年代から様々な国で麻の見直しがはじまり、オーガニックな農作物として知られています。ここでは、最近のEU、カナダ、アメリカ、中国の事例を紹介します。


<麻の10大特性>


1)再生可能な資源  
アサ科の1年草であるヘンプは、有限な化石資源と異なり毎年再生産ができる
2)成長が早い
  昔から100日草と呼ばれ、3ヶ月で約3メートルにまで成長する
3)最も古い栽培植物
  栽培植物としての起源は最も古く日本でも縄文時代の遺跡から繊維と種子が出土
4)農薬不使用
  ヘンプは病害虫に強い作物であり、殺虫剤、除草剤などの農薬は使用しません。
5)世界中で栽培可能 
  沙漠、氷雪原、ツンドラ気候と湿地以外では、痩せた土地・半乾燥地でも栽培可能
6)様々な生活用品を生み出す
  繊維から衣類、縄、紐、紙ができ、繊維をとった後の麻幹(オガラ)から建材、炭、プラスチック副原料、燃料、動物用敷藁、種子から食品、化粧品、塗料、潤滑油、葉から肥料、飼料、花から医薬品と25000種類の生活用品ができる植物。  
7)工業原料としての実績
  リーバイスのジーンズ、メルセデスベンツ等の自動車内装材、ザ・ボディショップのボディケア用品、EUでの自然素材断熱材など天然繊維の工業利用のノウハウが最も蓄積された植物  
8)地産地消のバイオマス
  将来、日本で栽培、加工、製品化できる資源作物として期待される
9)バイオ・リファイナリーができる模範的植物
  麻から繊維・麻幹・種子をとり、様々な加工によって無駄なく使え、持続可能な安定供給ができ、技術が進めば石油に変わる植物由来の工業用基礎原料になる
10)日本の伝統文化を支える素材
  神社の鈴縄、注連縄、御幣、下駄の鼻緒、花火の火薬、凧糸、弓弦、相撲の化粧回し、漆喰原料の麻すさ、茅葺屋根材、麻織物、七味唐辛子の一味など今でも使われる日本の伝統素材


※ 他の麻と比較して、4)、5)、10)は大きな特徴です。
 


EU(ヨーロッパ)の麻  ベンツの内装材、建材の用途開発が進む

1.栽培解禁の歴史

 EU諸国では、旧・ソ連の影響下にあった東ヨーロッパ(ポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど)は、第二次世界大戦後も大麻草(以下、麻と統一する)栽培が続けられていたが、西ヨーロッパの主要国のドイツ、イギリス、オランダ、オーストリア等では、大戦後の栽培は一時的に禁止されていた。唯一の例外は、フランスであり、昔から紙パルプ用に麻が栽培していたために一度も規制されていない。

 1990年代に環境問題や健康問題を背景とした麻の見直しが広がり、1993年にイギリス、1994年にオランダ、1996年にドイツとオーストリアにおいて薬理成分THCが0.3%未満の産業用の麻の品種に限定して栽培解禁となった。栽培解禁が可能となった背景に、ヨーロッパ農業共通政策(CAP)における補助金のスキーム(枠組み)の存在がある。現在のEUにおける麻は、EU規則(Regulation)の農業分野のFlax and Hemp(亜麻及び麻)という項目に位置づけられている。 この項目は、ヨーロッパ共同市場機構(CMO)の執行規則 (EC)No 1673/2000に基づく補助金スキームである。規則とは、EUの法体系において加盟国の法令を統一するために制定され、その国に直接の効力を持ち、すべての国内法より優先する性質をもつものである。

 この補助金スキームは、1970年に規則(EEC)No.1308/70が発行されてから今日まで内容の幾多の変遷がある。例えば、2001年からはTHC基準を0.3%から0.2%と厳しくし、品種リスト及びTHC測定手順書を発行している。この制度における補助金は、2008年に麻の藁束1t当たり90ユーロであった。

2.栽培条件

・栽培品種は、EU規則においてTHC成分が0.2%未満の品種であることを規定している。
・EU共通品種カタログの農業品種87種類のA-63番で“Hemp-Cannabis sativa”があり、
52品種が掲載されている。(2015年5月末段階)
・EU圏内の農家は、フランス政府が指定した麻専門の種子会社又は、麻の種子を保有するいくつかの農業試験場から入手する。
・栽培農家は、麻栽培のための特別なライセンスは必要としない。
・THC0.2%未満の品種であれば、種子、茎(繊維と麻幹)だけでなく、葉や花穂もビール、ハーブ茶、エッセンシャルオイル(精油)、香料、医療用原料などの商品化に活用することは合法である。
(日本では葉と花穂の利用がいかなる品種でも違法とされる)

3.現在の市場

市場規模(2012年) 70~80億円(1次加工会社出荷額ベース)          
栽培面積(2015年) 20,000ha  

4.麻の用途

 原料 用途の割合 
 繊維  製紙パルプ原料55%、住宅用断熱材26%、複合素材(自動車内装材など)14%、その他(栽培用マットなど)
 オガラ(麻幹)  馬の敷料45%、他の動物用敷料17%、建材15%、その他(1次加工場の熱利用、パーティクルボード)
 麻の実  飼料67%、食用オイル15%、食品13%、その他(化粧品など)
 花穂  精油、医療用原料

出典:Michael Carus, Stefan Karst, Alexandre Kauffmann, John Hobson and Sylvestre Bertucelli, The European Hemp Industry: Cultivation, processing and applications for fibres, shivs and seeds, EIHA,(2015)

カナダの麻 食品と医療に用途を広げる

1  栽培解禁の歴史

 カナダは、1938年のあへん&麻薬条例で麻の生産は禁止されていた。麻は、1990年代に新ビジネスとしての関心が高まり、1994年~1998年に研究調査が行われた。その結果、カナダ保健省は、一定の制約のもとで農業・産業分野に活用することを決定した。それは、1997年に施行した連邦法の規制薬物・物質法(Controlled Drugs and Substances Act:CDSA)に1998年に産業用大麻規則(Industrial Hemp Regulations)を設けて栽培を解禁するものであった。この規則では、産業用大麻の定義は次のように明記されている。

「『産業用大麻』とは、カンナビス属植物及びその部分で、その葉と花穂が0.3%を超えるTHCを有しないものをいい、その植物の派生物及びその植物の部分を含む。また、発芽不能の種子の派生物を含む。カンナビス属植物の発芽不能の種子(その派生物を除く)、及び葉、花、種子、小枝を含まない成熟した大麻の茎、並びにそれらの茎から取り出した繊維を主なものとするその植物の部分は、産業用大麻に含まれない。」

 つまり、葉と花穂がTHC0.3%以下なら、植物すべて利用可能であり、発芽可能な種子は、産業用大麻に含まれる。 それ以外の発芽不能な種子、茎や繊維はこの規則以前から規制対象外であり、産業用大麻の定義に含まれていない。カナダの規則で特徴的なのは、免許が栽培、輸入、輸出、加工、配送、所有、育種、分析、サンプル調査と全部で9種類あり、生産から輸出入までを管理している点である。免許の申請者は、既定の条件を満たし、さらに、警察の保安審査を受け、葉や派生物のTHCレベルの検査は、カナダ保健省によって定義された規格に従って、適格な検査機関によって実施しなければならないと規定されている。

2 栽培条件

・THC0.3%以下の44品種(2015年)に限定している。
・保健省(州)からの免許が必要である。
 免許には、栽培、輸入、輸出、加工、配送、所有、育種、分析、サンプル調査の9つの種類がある。
・栽培農家は、種子をカナダ国内3社の麻を取り扱う種子会社から購入する。
・栽培後もTHC検査の免許のある機関から年1回の検査を受ける必要がある。

3 現在の市場

<産業分野>
市場規模(2014年):約57億円(輸出額) 
栽培面積:26982ha(2013年)、43912ha(2014年)、50600ha(2015年)
栽培者数:768人(2014年)

<医療分野>
ブリティッシュコロンビア州(BC州)の市場規模(2011年):6000億円 
カナダ保健省で許可された全患者数:15000~20000人
全カナダの実際の利用者数(推定):50~100万人
※カナダは、2003年から医療大麻についても合法化している。

4 麻の用途

 2006年に大量に栽培されたが、その後の在庫調整のため大きく栽培が減り、2012年では20000haを超えた。EUと異なりほとんどが麻の実を食用に利用。

出典:Daniel Kruse, New Data on Hemp Food Market and THC Limits for Food and Feed, EIHA 12th conference 2015
"B.C.’s medicinal marijuana business growing" Business In Vancouver, Jul 3, 2012


アメリカの麻 世界に大麻禁止政策を普及させた国は、解禁の方向へ

1.解禁の歴史

 アメリカ建国の父ジョージ・ワシントンは、麻栽培者であり、独立宣言文の紙は、麻紙であったことが知られている。1800年代の布地と紙は、ほとんどが麻からつくられてきたが、禁酒法の廃止を受けて制定された1937年のマリファナ課税法によって実質的な栽培が不可能となった。

 第二次世界大戦中は、軍服、戦艦のロープ、パラシュートの綱などに不可欠であった麻は、一時的に解禁されたが、戦後は栽培されなくなった。1961年の麻薬に関する単一条約において「大麻」の規制を提案し、国連で採択されたことから全世界に対して大麻撲滅のキャンペーンの旗振り役となった。ところが、1970年代のヒッピームーブメントや反戦運動においてマリファナの喫煙が反社会的ファッションとして若者の間に広がり、エイズや緑内障、ガン疼痛などの自己治療のために大麻を利用する人が徐々に増えていき、法規制と実体が乖離する状況が生まれた。

 1996年にカリフォルニア州が医療目的の大麻の利用を住民投票で合法化すると、次々にその政策に従う州が増え、現在では23州+ワシントンDCとなった。さらに、住民投票の結果を受けて2013年からはワシントン州とコロラド州などが嗜好品として合法化した。一方で、産業目的の大麻の利用は、2014年に産業用大麻農業法が可決してから、複数の州で栽培が始まったところである。
 大麻は、医療、嗜好の分野で連邦と州で意見が対立するテーマであり、連邦議会で州政府との整合性を取るための法案が提案されている。

2 栽培条件
 産業分野:2014年2月 7606 of act 産業用大麻研究法 可決
      2014年5月 H.R.4660 産業用大麻農業法 可決
 医療分野:患者が自家栽培 本数は3~18本と州法によって定められている
      患者が栽培できない場合は、介護師が代替することが可能。


3 現在の市場
      
<産業分野:繊維・食用の品種>
アメリカ国内の麻産業:620百万ドル(約744億円)
            ボディケア・食品は80百万ドル(96億円)
コロラド州 1040ha(2014年開始)
ケンタッキー州 697ha(2014年開始)
テネシー州 641ha(2014年開始)

<医療分野:薬用の品種>
全米:27億ドル(3240円億円)市場規模(2014年)
2020年になると、1.5兆円産業になると推測
栽培を合法化した州(2015年):23州+ワシントンDC

4 麻の用途

 分野  用途
 産業  衣料品、紐や小物、健康食品、化粧品、紙、建材など
 医療  オレゴン州の事例では、深刻な痛み92%、持続的なけいれん25%、深刻な吐き気13%、癌5%、発作2%、悪液質1%、緑内症1%、エイズ1%、アルツハイマーの興奮1%未満となっている。特に鎮痛剤モルヒネが体質的に合わない患者が約20%存在しており、その方たちにとっては、マリファナの鎮痛効果によって救われている。


出典:Anndre Hermann USA and Canadian Hemp Update Production, Regulation and Reality EIHA 12th conference 2015.
The State of Legal Marijuana Markets 3rd Edition Arec View Market Reserch 2015.



中国の麻 国家プロジェクトがスタート

1 歴史

 麻は、中国では伝統的な麻類作物であり、1950年代に多くの麻の育種栽培の研究をしていた。しかし、全世界的に大麻栽培の禁止政策が実施され、50年代から生産量は90%以上減少した。中国の麻栽培の分布は、黒竜江、吉林、遼寧、河北、山西、山東、安徽、河南、甘粛で、毎年2~3万トン生産され、今でも世界で最も栽培されている。中国では、東北の方では銭麻と呼び、山西では火麻、安徽では寒麻、甘粛では湖麻、雲南では雲麻と呼ばれている。


 2007年から中国の軍の漢麻資材研究センターとアパレル業界のNo1であるヤンガー・グループが出資して、漢麻産業投資控股有限公司が設立され、その投資額は2億元(約30億円)であった。2009年に雲南省に最新鋭の紡績工場を新設し、2011年から年5000トンのヘンプ繊維を生産している。

 中国国家が麻に注力している理由はいくつかある。沿岸部と内陸部の経済格差の解消、麻が山間地、荒地、塩分を含む痩せた土地で栽培可能な作物であること、中国国家がかかえる砂漠化、食糧不足、石油不足、心理不足、水の枯渇、農業問題を解決するための手段、この結果、中国の産業競争力を強化することねらいとしている。

2 栽培条件

中華人民共和国 推奨国家標準「GB/T16984-2008大麻原麻」によって、2008年からTHC含有量によって品種名称が定義づけられている。
 工業用大麻低毒大麻品種:THC0.3%以下
 無毒大麻品種     :THC0.1%以下
しかし、実際の栽培においては昔から栽培してきた歴史があるため、それほど厳密に管理されていない。例外的に雲南省は省の規定で0.3%以下の品種基準を定めている。

3 現在の市場と展望

繊維用15000ha、種子用13000ha、繊維生産量38000トン、種子13000トン(2004年)

ヤンガー社では、下記のような計画がある。

引用:郝新敏:軍用漢麻材料研究センター、第2回アジア大麻産業国際会議発表資料2013.2.21

4 麻の用途

 原料  用途
 繊維  紡績糸、生地がほとんど。
 麻幹  焚付用の薪(中国では森林率14%しかないため木材が貴重品である)
 麻の実  輸出用で飼料および食用