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暮らしに役立つ麻

麻から25000種類の様々な生活用品ができるといわれ、健康と環境のことを考えた衣食住をサポートする自然素材です。



衣服・小物  環境にやさしく、消臭・抗菌が高く、吸放出がよく機能性が高い

今日、私たちの着ている服の半分以上が木綿(コットン)です。コットン100%というとナチュラルな感じがします。ところが、コットンの服を着ているだけで、私たちは、農家の体を蝕み、土壌汚染と水不足を招き、大地の荒廃という環境破壊に貢献しているのです。普通の農産物ならば、口に入れるものなので身近な問題として認識しやすいけれど、衣服となると、自分とは異なる世界の出来事として無関心なままです。


 木綿の栽培は、全世界の農地面積でたったの2%しかないのに、殺虫剤、除草剤、土壌消毒剤などの農薬使用量の26%を占めているといわれています。収穫時に人工的に葉や茎を枯らさないと、葉の葉緑素がシミになってしまうので、コットン畑に枯葉剤を飛行機から空中散布するのです。また、かつて世界第4位の湖であったアラル海は、周辺のコットン栽培によって干上がってしまった。コットンは、成長時に大量の水と栄養分が必要となるからです。


 それに比べて麻は、農薬を必要とせず、少しの肥料でよく、雑草や害虫に強いため、コットンように環境破壊を招かない作物です。温帯だけでなく、亜寒帯、熱帯、半砂漠地帯でも生育でき、世界中どこでも栽培できます。特にアパレル業界において麻(ヘンプ)は、オーガニック・コットンと並ぶ天然素材として認知されています。麻は、あえて「オーガニック」といわなくてもはじめからオーガニックな素材なのです。


 さらに、麻繊維の構造やその成分から消臭性、抗菌性が高く、体の湿度を適度にたもつ機能をもちます。高温多湿な日本において「麻」の服は欠かせないものなのです。


麻の実 健康長寿には不可欠な食材として注目

「麻の実(あさのみ、おのみ)」は、うどんやそばなどの薬味である七味唐辛子の一味として入っています。麻の実は、タンパク質と食物繊維と脂肪酸と3つがバランスよく含まれ、昔から整腸作用の高い漢方薬として使われてきました。


従来難しかった麻の実の堅い殻を剥く技術がドイツやカナダで開発され、加工や料理の自由度が広がりました。クルミのような味がし、大豆のように加工食品ができる麻の実は、新しい健康食品として生活習慣病の予防・改善の効果が注目されています。


日本では、年間の輸入量が1000トンほどあり、ほとんどが鳥のエサとして流通しています。中国の100歳長寿の里・巴馬(バーマ)の研究より、ポリフェノールの一種「カンナビシンA」には抗酸化作用があることがわかりました。


保湿性と浸透力のあり、美肌に最適なヘンプオイル

麻の実から抽出されるヘンプオイルには、非常に高い浸透力と保湿性があり、乾燥したお肌をしっとりとさせます。薬事法によって規制されていたが、ヘンプコスメ専門会社「(株)シャンブル」が2004年にヘンプオイルを化粧品原料登録してから、日本国内の製造販売が可能となり、ヘンプコスメ商品を多数開発し、大手デパートでも販売されています。また、手作り石けんの愛好家には、ヘンプオイルの心地よさのファンも多いものです。


風合いのよい非木材紙 ヘンプペーパー

2000年から日本の製紙会社2社がヘンプ紙の製造に取り組んでいましたが、2008年の古紙偽装事件(古紙の割合が表示より著しく低かった)を受けて市販品がなくなりました。しかし、今では、3つの和紙事業者がヘンプ紙を使ったランプシェードや壁紙を製作しています。また、無薬品ヘンプパルプ25%入りのヘンプ紙がヤンガートレーディング社によって開発され、それを使った紙製品を販売しています。


呼吸する心地よい家ができる 建材やインテリアに!

日本では昔から石灰と海藻糊と麻スサ(ヘンプ繊維を5mmカットしたもの)を壁材(漆喰という)として利用してきた歴史があります。日本では2003年から石灰と麻チップをベースにした塗り壁材を施工及び販売しています。その壁は、デザインと調湿性に優れ、リフォーム市場に広がっています。


他にも断熱材、ヘンプ壁紙、ヘンプオイル塗料、麻チップの調湿建材ボード、ヘンプ100%蚊帳、麻布団、麻炭が開発され、2008年7月31日〜11月11日まで、ヘンプ建材とインテリアの企画展を業界では有名な室内環境情報センター「OZONE」(東京・新宿区)で実施されました。


動物用敷料に最適な素材

海外では、繊維を剥いだ後のオガラでチップ状になったものを競走馬の敷料として使っています。麦藁の敷料と比べて吸水性、埃が少なく、消臭効果があり、防虫性に優れ、クッション性があり、有害化学物質ゼロという高品質なものとして扱われています。沖縄では牛、豚、鶏などで実験において、動物のストレスを軽減させ肉質を上げることが報告されています。今後、高品質な家畜分野において利用が広がることが期待されています。

プラスチック・複合素材

海外では、ベンツやBMWなどの自動車用内装材にヘンプ繊維が強化材として使われているが、日本での採用実績はまだありません。日本では、備蓄米の古々米と栃木県産の麻(オガラ)でつくったINASO樹脂が開発され、PP(ポリプロピレン)の代替製品として製造販売され、団扇、箸、しゃもじ等が商品化されています。


麻炭は、新しいデトックス商品

繊維を採った後の芯材をオガラ(麻幹)といい、それを炭化させたものが麻炭です。もともとは、昔の懐炉灰や花火の助燃材として使われてきましたが、最近では、パウダー化した麻炭を使って様々な生活用品がつくられています。特に麻炭は、備長炭の4倍、竹炭の1.6倍の多孔質性があり、吸着や消臭に優れた効果があると考えられています。


バイオ燃料・エネルギーの自給を目指して

最近は、燃料と食糧の競合を避けるために、木質系からBTL(バイオ液体燃料)をつくることが注目されています。BTLは、麻茎から取ることができ、収量の2割が液体燃料となり、余剰ガスで発電と熱エネルギーが取り出せる装置です。離島経済や中山間地域で500?1000人規模で1台のエネルギー自給プラントを導入することが提案されています。


様々な疾患に適用する薬草として

 欧米では、繊維用の品種の麻ではなく、THCを含む薬用型の品種の麻が、有効な治療薬として使われはじめています。最近の欧米の医学的研究により、ガン、エイズ、緑内障、喘息、てんかん、鬱病、慢性の痛み、多発性硬化症などの神経性難病に効果があることが明らかにされています。これら臨床報告や研究は、1980年代後半から人体にカンナビノイド受容体と脳内マリファナが発見されたことによって、医学や薬学分野では世界規模での研究競争がさかんになってきています。


 1996年のアメリカのカルフォルニア州をきっかけに今では20州で医療利用が許可され、他にはオランダ、ベルギー、カナダ、イスライル、スペインやドイツなどで医師の診断書などの所定の手続きがあれば許可されています。日本の製薬企業である大塚製薬も2007年からアメリカでガンの疼痛を対象とした鎮痛剤の臨床試験及び創薬開発を始めています。


 日本では、戦前までは「印度大麻」として第5改正薬局方(〜1951年)まで鎮静・鎮痛薬として市販されていた歴史があります。しかし、戦後に出来た大麻取締法の第4条によって、患者に処方する医者も、処方された患者も懲役5年以下の刑罰に処せられます。他の薬なら医者と患者が合意すれば、国内で未承認の薬でも試用できますが、大麻に関しては医者の臨床試験も基本的な医学的研究もできない状況なのです。


このような状況下でも脳内マリファナのメカニズムの基礎研究は、日本でも盛んに行われており、金沢大、九州大、東大などで神経学及び麻酔学の分野で研究され、世界的な成果を多数成し遂げています。世界的な研究成果を生かしつつ、医療大麻の研究ができるように日本でも一刻も早く、法改正する必要があります。